長坂泰之『中心市街地・活性化のツボ』(1)


 長坂泰之さんが『中心市街地・活性化のツボ』の原稿を書いてくださった。長坂さんは『失敗に学ぶ中心市街地活性化―英国のコンパクトなまちづくりと日本の先進事例』を横森豊雄さん、久場清弘さんとともに書いて下さった方で、この本の編集・レイアウトを担当した岩崎健一郎君が執筆をお願いし、快諾いただいたものだ。
 原稿には興味深いことがいっぱい書いてあった。そのさわりを紹介しよう。

中心市街地の衰退と郊外大型店

 中心市街地の衰退が始まってから久しい。
 今から25年ほど前、藤田邦昭さんの『生き残る街づくり―都市・商店街・再開発』という本を出したが、そのときのキャッチが「あなたの街は21世紀に生き残れるか。これから繁栄する都市は、商店街が核となる! 商店街活性化によって生気を取り戻した街、手をこまねいたままさびれてしまった街など、事例考察によって街づくりに不可欠な事柄を提言」だった。
 これだけ読むと、25年たっても通用しそうな気がする。


 長坂さんも指摘しているが、商店街のピークは1970年頃であり、それからずーっと衰退してきた。しかし特に顕著になったのは、中心市街地活性化三法が施行されてから今日までの十数年だ。


 活性化法ができたのに衰退が加速されたのは皮肉な話だが、当時、通産省のお役人たちは、三法は手切れ金で、5年もしたら終わりだと言っていると友人から聞いたことがある。
 大型店の出店を抑えていた大店法を廃止し、流通を近代化しようという点に、狙いがあったという訳だ。
 その背景にはアメリカの圧力があり、内外価格差を批判したマスコミの論調があった。「日本の流通は遅れているから、物価が高い」といった議論だ。


 では、大店法廃止によって内外価格差が縮小し、国民は豊かになったのか。


 ちょうどその頃から、売上げはピークを越え、一方で中国等から安い物がどんどん入ってくるようになり、商業全体が安売り競争になってしまった。
 ちょっと前まで大店法廃止、流通の合理化で物価を下げろ!といっていた人たちが、今度は物価が下がって大変だ!と言い出したのだから、世の中よくわからない。


 それにしても、大店法廃止、それによる郊外大型店の急増で、僕たちが幸せになったのだろうか。
 また、仮に失ったものが多かったのだとしたら、それは取り戻すことができるのだろうか。


 明日から、長坂さんの『中心市街地活性化のツボ』(草稿)を読み解きながら考えてみたい。


続く


○アマゾンリンク
横森豊雄・久場清弘・長坂泰之『失敗に学ぶ中心市街地活性化―英国のコンパクトなまちづくりと日本の先進事例


藤田邦昭『生き残る街づくり―都市・商店街・再開発


○参考資料
ノッティンガムの中心市街地
学芸チャンネルでの長坂さんのビデオと、その解説です。