佐藤由美「食のまちづくり〜小浜発!おいしい地域力」



 「私はこの年になるまで、ここがいいところだとか、食べているものがいいものだと思ったことはなかった。お客さんからここがいいところだといわれて初めて、ほんまやなあ、いいところやなあと思い、野菜がおいしいといわれて初めて、ほんまやなあ、おいしいなあと思えるようになった。花が咲いてもなんとも思わなかったのに、今はきれいに見えるんですわ」。
 学校給食用の野菜の校区内生産にとりくみ、朝市に取り組み、多くの人に出会った岩崎恒一さんが語ったこの言葉が、佐藤由美さんを動かした。


 「68歳になってもこれだけ意識を変えることができるのだという事実に新鮮な驚きを覚え」、小浜の食のまちづくりの取材にのめり込んでいったという。


 そして佐藤さんは、伝統野菜や伝承料理を未来に発信しようとしている人たちや、食のまちづくりに参加しようと天然塩づくりを復活させた障害者、豊かな海を取り戻そうと取り組む高校生たち、農村の資源を生かした農村女性たち、湧水を生かしていくつもの食品を開発した地域団体など、さまざまな人たちと出会っていく。


 まちづくりの究極の目的が、一人一人を幸せにすることであるなら、一人一人を輝かせた食のまちづくりは、経済効果がどうのといった議論を超えた、真の成果をすでに上げている、と言えるのではないか。


 それにしても、最近、食に関係するまちづくりが元気だ。
 『食旅と観光まちづくり』でも紹介したように、食は観光まちづくりの核となっているし、1月に出す関満博さんの『「農」と「食」のフロンティア』では、辺境の地から、自立と産業化という新しい未来が生まれつつあることを熱く語っている。


 閉塞した都会で、消滅危惧集落の将来を心配するより、自分たちの未来を「農」と「食」に照らしてみたほうが良いのかもしれない。


・佐藤由美さんのイベント
日 時 2010年12月16日(木曜日)18:00開場、18:30〜20:00
場 所 京都/学芸出版社3階ホール
会 費 本代込み2000円、ご購入済みの本をご持参いただいた方は500円
申 込 下記ホームページより

・本のページ
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1278-1.htm

・佐藤由美さんの本
佐藤由美『自然エネルギーが地域を変える―まちづくりの新しい風
佐藤由美『持続可能なまちは小さく、美しい 上勝町の挑戦


関満博さんのイベント
「農」と「食」のフロンティア 〜中山間地域から元気を学ぶ〜
日時:11年1月19日(水)午後2時30分開場、3時から4時半頃まで
                          (遅くとも5時ごろ )
場所:京都、学芸出版社3階
会費:1000円
申込:下記より
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1101seki/index.htm