平川克美『小商いのすすめ』

 『小商いのすすめ』という本だから、小商いのことが書いある、小商いを始めようというときに励ましになるかと期待して買ったのだが、当てが外れた。

 それはともかく、興味深かったのは「人間とは(大きな問題に大勢で取り組むと)自分が意思することとは、必ず違うことを実現してしまうような(不合理な)生きものだ」。しかし、「小さな問題であれば、考えたり実践したりすれば解決することが可能であり、そのような問題に関しては、当事者は責任を負っている」という考え方だ。

 あるいは、「わたしが商品経済を中核システムとする「いま・ここ」に生まれたこと、そこで生きていることは偶然であり、そのことに対してはなんの責任もない」。しかし「「いま・ここ」で生きることに誇りを」持ちたいがゆえに、「「いま・ここ」にある自分に関して、責任を持つ生き方をしたい」とも書かれている。

 最近、この考えに通じる話をいくつか聞いた。今の世の中を見ていると、ついつい頷きたくなる。それでも真摯に生きようというメッセージなのだろうが、「大きな夢には関わらない方が良い」という諦観も色濃い。こういう姿勢には、かつての革命家ならきっと反革命のレッテルを貼っただろう。そんな革命家たちが何を実現しえたのかを考えたら、反革命、ウエルカムってところだろうが、それでも僕は大きな問題に繋がることを夢見たい。


(おわり)

小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ