トム・ピーターズ『サラリーマン大逆襲作戦〈1〉ブランド人になれ! 』

 山崎亮さんが乾久美子さんとの講演会で紹介していた本だ。彼がどんなビジネス書を読んでいるのか、気に入っているのか知りたくて買ってみた。
 たしかに、なかなか面白い。山崎さんの仕事スタイルにも結構使われているように思う。これは拾い物だった。
 ただし、よく紹介する反グローバリズムの本ではない。むしろ90年頃から始まった戦後の安定した秩序の崩壊をチャンスと捉え、手にした自由をどう生かすかという姿勢で一貫している。
 ただ、それがイヤらしく思えないのは、徹底して個人の自由に拘っているからだろう。
 会社奴隷がいいですか? それとも野垂れ死ぬ自由が良いですか?って問われたら、即座に「自由だ!」という独立不羈の精神があふれている。
 しかも、お金がすべてじゃない。お金は結果としてついてくるかもしれないが、大事なのはひたすら自分を高めていくことであり、世間の常識に挑戦し続けることだ。大事にしなければならないのは信頼、お客さんとともに生きること。そして売ることに夢中になれること。売る!売る!売る!・・・。

 ちなみにこの本は2000年に訳された本だが、94年に訳された本でも「けったいな会社」を創ろうとアジっていた。激動の時代が始まるちょっと前、80年にロバート・ウォーターマンとの共著で書かれた『エクセレント・カンパニー』が代表作だそうだが、そこでも「自主性と企業家精神」が強調されているようだ。その点では、たとえ今は会社にいても「私は雇われているんじゃない、私が会社だ」という気持ちを持て!という姿勢は一貫している人だ。

 彼がいう社会の激動は、そこまでドラスティックではないけれども、僕の身の回りでも起こっていた。90年頃から徐々に始まって、「これからは個人が売りだ!」という確信はあったものの、同じ会社にいるとそうそう変われないまま、ここまで来てしまった。あげく変化の悪い面だけが目立ってきているように思う。ピーターズがいう「真面目に、しかし安穏とサラリーマン道を歩いていると、そのうち道が消えてなくなり地底に真っ逆さま」みたいな事態が、とうとう身近になってきている。

 僕は、こういう極端な社会が良いとは思えない。それでも、今はそれが前提だというなら、会社奴隷よりは野垂れ死ぬ自由を選びたいと思う。 
 だから、そうありたいという心を持っている人にはお薦めの本だ。

 とはいえ、この本には200項目以上の「やってみよう」が書かれているが、これを十数個、明日から実行するのは厳しい。積極的にコミュニティ(人脈)をつくれ、朝食会や昼食会にどんどん参加し、また人を誘い出せと書かれているが、これが一番やってみたいが、そのまま実行するのは今は難しそうだ。朝食会も昼食会も、身の回りにない。もう少し現実的な方法を探してみよう。

(おわり)

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トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈1〉ブランド人になれ! (トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦 (1))