『田舎の宝を掘り起こせ〜農村起業成功の10か条』


 この本はえがおつなげての曽根原久司さんと、えがおつなげての編で、杉本淳さんと矢崎栄司さんが書かれたものだ。
 狙いは農村起業の手引き書。「えがお大学院」という起業家支援事業に参加し、起業した45人を紹介するとともに、とくに16人をとりあげてタイプ別に詳しく紹介し、彼らの「成功の秘訣」を解き明かしている。また、筆者たちの豊富な経験のなかから、すでに失敗してしまった他の事例も紹介し、その「失敗のワケ」を明らかにしている。
 読んでいると、紹介されている起業の多様さと、様々な知恵に驚く。
 また、彼らは、流行の知恵を取り入れるのではなく、オリジナルな、自分だからできるビジネスを、きちんとした裏付けをもって確実に進めている。その準備も入念だ。
 そのほか、この本では「農村起業家に求められる意思とスキル」「農村起業家になろう〜起業成功の10か条」という章で、筆者の豊富な経験がまとめられている。
 本全体を通してマーケティングの大切さ、難しさを感じた。良い志があり、大きく見れば求められている物でも、ニーズは簡単に掴めない。本もほんとうにマーケティングが難しい。こんな良い本をなぜもっと多くの人に知ってもらわないの?と言われることもあるが、イヤ、それが掛けられるお金や労力では簡単に出来ないから苦労するんだ。


 またさきほども触れたが、失敗にも触れている点が良い。失敗例は売れ筋と言われているけれども、ほんとうに役立つ失敗例を集めるのは難しい。また書かれたい人も少ない。著者も知っていても、失敗した人の気持ちを考えると気楽には書けない。そういう限界のなかで、ポイント、ポイントで失敗例もその勘所が紹介されている。

 いま、青年就農給付金が大々的に拡張され、すでに1万人を超える就農希望者が集まっていると聞いた。就農し独立する人たちに年間150万円を、準備期間も含めると7年間にわたって給付しようというものだが、給付終了後は自立が必要だし、給付申請には継続可能な経営計画が必要だという。その際、農業だけではなく、自らの生産に係る農産物を使った関連事業〈農家民宿、加工品製造、直接販売、農家レストラン等〉も独立計画に組み込むことができるから、本書で大きく取り上げている六次産業化やツーリズムを考える人も多いだろう。
 高品質の農産物を農協を通さず直売等で販売したり、加工して付加価値を高めること、さらにレストラン、食を中心としたグリーンツーリズムなど、これから就農する人たちがやりたい分野でもあるだろう。
 だから農業を基盤に自立を考えている人たちにも、この本は役立つと良いな、と思う。

(おわり)

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田舎の宝を掘り起こせ: 農村起業成功の10か条