水野和夫・萱野稔人『超マクロ展望〜世界経済の真実』

 藻谷浩介さんが人口減少を根拠に日本のデフレの不可避性を説いているとすれば、こちらは500年という長いスパンのなかで、世界全体のデフレ、成長の終焉を説いている本だ。

 水野さんによると、70年頃から、資本主義は生産で稼ぐことができなくなり、金融資本主義に向かったが、それは経済システムがその末期にいつも起こっていることで、バブルを再生産していかざるをえず、長続きするわけがないとのこと。

 対談本では良く分からない。『100年デフレ』という本もあるというから、そちらを読んでみるか。
 それはともかく、日本だけではなく、世界中で成長の時代が終わり、日本はその意味では最先端を走っているのだと言われると、なんとなく嬉しくなってしまう。
 藻谷さんが山崎さんとの対談であげていたが、調査によると「他人の不幸は私の幸せ」という人が、日本に多いのだそうだ。僕もそうなんだろうか。

 ところで、水野さんは処方箋として規制による市場の創出をあげていた。
 たとえば環境規制は、古くはマスキー法が日本の自動車会社に多くの利益をもたらしたように、また、ヨーロッパが排出権取引国益を追求しているように、市場を盛り上げる可能性があるそうだ。

 そういう面があることは確かだろうし、そういったルール作りには国家が前に出る必要があるというのも頷けるが、誰もが納得できる必要性もないままルールを作ってもうまく動かないのではないか。
 排気ガスなどの公害のときの環境規制と、地球温暖化を理由としての環境規制では、被害が目の前に見えるかどうかという点で決定的な違いがある。

破局が来るまで分からないのが人間だというのも悲しいし、イランで戦争なぞ絶対に起こって欲しくないが、やっぱりガソリンが1000円、2000円になるまで、ダラダラ時を過ごすしかないのだろうか。

(おわり)

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