『都市・まちづくり学入門』『いま、都市をつくる仕事』クロストーク3

『いま、都市をつくる仕事』での議論

 ところで、『いま、都市をつくる仕事』は1章が「都市へのアプローチ」と銘打って、新しい仕事の仕方をしている10人を紹介し、2章では「ひろがる仕事のかたち」と銘打って「企業系」「政治・行政系」「研究系」「NPO系」「独立系」に分類して43人の仕事を紹介している。
 そして3章が「都市の魅力」×「仕事の可能性」なのだが、そのなかの「お金の流れから考える」が「まちづくりで飯を食えるか」を扱っている。
 お金の流れを示している「都市におけるお金の流れ」という下記の図(同書P189より)を見ると、デベロッパーと行政を通るお金の流れだけが描かれている。
 いくら単純化するためとはいえ、これは単純化しすぎだろう。

 第一に、「都市をつくる人」はコンサルタントと、建設業者、建築家、デザイナーだけではない。ハード系に限定しても、たとえば工務店ハウスメーカーなど、住民や事業者から直接支払われるお金が少なくない。まして維持補修となれば、なおさらだ。
 第二に、この図では、1章で紹介された10人のうち半分以上が、どうやって食っているかを説明できない。2章の「NPO系」「独立系」にしても同様だ。

 これは三菱UFJリサーチ&コンサルティングの沼田さんが書いてくださった。一番難しいテーマを引き受けて、堅実に答えている。都市計画や建築を学んだ人の就職口という視点から見れば、現状を正しく説明しているし、コンサルタントの仕事、求められる職能が変わってきているという指摘は、現場にいるだけにリアリティがある。

 しかし、「都市をつくる仕事」を語る以上、もう一歩、踏み込んでもらいたかった。

 たとえば1章で紹介された戦後ビルの魅力を発信し続け、その再利用にもチャレンジしているビルマニアカフェの活動は、「仕事ではないし、遊びでもない。ビジネスになっていないが、遊びの範囲を超えている」のだそうだが、ビジネスに踏み出しても不思議はない。リノベーションに取り組んできた中谷ノボルさん(アートアンドクラフト)は良い例だと思う。
 OSAKA旅めがねも、まだまだこれからだろうが、今でも専任のスタッフを雇えている。同様の仕事でも自然をフィールドにしたエコツアーは事業として成り立っているものが増えてきている。
 実は、久さんは大学で理論を研究しているだけではなく、自ら年間2000万の事業規模を誇るNPOも率いている。なぜ、まちづくりの先生がそれだけの事業を回せるのか、そこのところもクロストークで聞いてみたい。

(おわり)


○「都市をつくる仕事」の未来に迫る Crosstalk
#1都市をつくる役割を考える
 魚谷繁礼×梶隼平×鄭英柱×佐久間康富×武田重昭
 3.17 京都
#2「まち飯」の面々
 いま、都市をつくる仕事に、もの申す。
 4月上旬
#3久隆浩と「なる都市」の方々
 まちづくりで飯が喰える時代がくる!くる?
 山崎義人×柴田祐×松村暢彦×坂井信行
 ×嘉名光市×武田重昭×佐久間康富他
 4.12 大阪
詳細&申込み
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都市・まちづくり学入門