小嶋光信『日本一のローカル線をつくる 〜 たま駅長に学ぶ公共交通再生』


 書かれていることは公共交通のことを勉強した人には周知のことも多いかもしれない。
 だが著者の小嶋さんは和歌山電鐵をはじめ、多くの地方公共交通を再生してきた人だ。実践した来た人の言葉は重い。ひょっとしたら世の中よく出来るんじゃないかという気分にしてくれる嬉しい本だ。

 一方、小嶋さんは「地方の鉄道やバスをすべてタダにしても1兆円弱、高速道路をすべてタダにしても2兆5千億円、どちらが国民に有効か真剣に考える必要がある」と民主党の議員に叫び続けてこられたそうだ。全く同感だ。車のインフラはタダにするといってもマスコミもエコノミストも文句を言わないのに、なぜ、公共交通はムダだの、赤字垂れ流しと言われ続けなければならないのか。

 そんな風潮に対して、これだけ実践してきた人の言葉は重たいだろう。
 小嶋さんは「政策の改革なしには10年後には地方公共交通の50%ぐらいは潰れてしまうかもしれない」と書かれている。規制緩和については、需要が減っているのに、競争を加速すれば、安全無視の過当競争にならざる得ないという。

 もちろん小嶋さんが公共交通をタダにしろと言っている訳ではない。
 大都会では民設民営、地方都市では公設民営や民設民営、準公営化のミックス、過疎地域では社会保障的な公設民託が必要だと言われている。
 たとえば小嶋さんの会社の本拠がある岡山では年30億円を10年間投資し続ければ、エコ公共交通大国が実現できるという。そうすることで街の環境が改善され、市民の健康度がアップし、商業売上げが上がり、税収も上がる。コストカットだけの再建は長続きしない、地域の付加価値を上げる投資が同時に必要という主張も頷ける。

 ところで、カバーの写真、小嶋さんの顔ばかり大きくて、たまちゃんが小さい。ちょっと離れるとたまちゃんとは分からないのでは?と心配だったのだが、ファンには分かるらしい。
 出来上がったばかりの本をもってランチにいったら、パスタ屋さんのマダムが表紙のたまちゃんを見つけて声をかけてくれた。なんでも、たまちゃんのファンなのだそうで、何回も会いに行ったという。そのうえ、小嶋さんの名前まで知っていた。

 たま駅長の本ではなくて、小嶋さんが書いた本だし、公共交通の本だと説明したのだが、それでも買ってくれるという。十数ページだけど、たまちゃんとの出会いも書いてあるから、まあ、良いんだろう。

 次は、たま駅長自筆の「みんなで守ろう鉄道、バス」という絵本でも作れないものだろうか。

(おわり)

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