『都市・まちづくり学入門』（日本都市計画学会関西支部新しい都市計画教程研究会編）（２）
本書は「結果自然成（けっかじねんになりる）」の「都市・まちづくり学」を一から十まで解説しているかというと、そうではない。そういった姿勢で従来の都市計画・まちづくりを見渡してみて、これは鍵になりそうだという話題を拾い、光を当て直している。だから都市計画の基礎的な事柄、法制度などは、知らなくても理解できるように書かれてはいるが、必要に応じて別途学んで頂くことが前提となっている。
たとえば「６章 都市のマネジメント」は、BIDとか大丸有といったエリアマネージメント論ではなく、最近の経営論で言われる「フレキシブルな組織体制に基づくマネジメント」や、自律的な個人と、それを結び付ける場や機会を通した自発的秩序形成という観点から、大阪のさまざまなまちづくり団体をとりあげ、分析している。
また「５章 コミュニティと地域自治」では、従来のコミュニティ論や都市計画やまちづくりからのアプローチを紹介した上で、自律的な個人を構成主体とするアソシエーション的な地域コミュニティの可能性を語っている。
ちなみに目次は次の通り。
詳しくは http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2520-0.htm をご覧下さい。
序章 ポスト近代の都市・まちづくり（久 隆浩）
1 都市の空間構成を読み解く
1章 農から学ぶ空間秩序（柴田 祐）
2章 都市空間の秩序とその諸相（嘉名 光市）
3章 人びとの生活から都市空間を読み解く（林田 大作）
2 協働・共生のしくみづくり
〈協働のまちづくりのしくみ〉
4章 協働のまちづくりのあり方（久 隆浩）
5章 コミュニティと地域自治（坂井 信行）
6章 都市のマネジメント（篠原 祥）
〈協働のまちづくりを担う人材〉
7章 まちづくりを支える専門家（坂井 信行）
8章 まちづくりを担う市民（松村 暢彦）
9章 自律的まちづくりのきっかけをつくる職能（永田 宏和）
〈共生のための都市・まちづくり〉
10章 自然の摂理を活かしたまちづくり（宮崎 ひろ志）
11章 都市と自然の共生（下村 泰彦）
12章 人と人との共生のまちづくり（室粼 千重）
これを往年の名著『都市計画』や最近のヒット作『初めて学ぶ都市計画』（悔しいが他社）、あるいは建築学会編による「まちづくり教科書」シリーズと比べてみると面白い。
日笠さんのはさすが整然としているけど、今となっては法制度の解説のようにも見える。
『初めて学ぶ』は都市計画の制度に相当気を遣いながらも、テーマ別を強く意識している。「まちづくり教科書」は１巻をのぞいて完全にテーマ別まちづくりだ。
その点、本書は、自然や福祉も取り上げているが、それはテーマ別のまちづくりの解説ではなく、「結果自然成」のベースとなる自然、環境と、自然成る（じねんになる）ための社会のあり方にどう働きかけるかに集中している点がはっきりと読みとれるだろう。
意欲的な、中身の濃い一冊。是非、お読み頂きたい。
■都市計画（第三版）（共立出版、１９９３）
日笠端著
１章 都市計画の発達
２章 都市計画の意義
３章 都市基本計画（総論）
４章 都市基本計画（各論）
５章 地区計画
６章 都市計画制度
７章 土地利用規制
８章 都市施設と地区開発事業
■初めて学ぶ都市計画 （市ヶ谷出版、２００８）
饗庭伸・加藤仁美・鈴木伸治・伊達美徳・根上彰生・柳沢 厚編
【現況と展望編（制度と技術編は略）】
第１講 都市と都市計画
第２講 都市と市街地
第３講 都市の住まいと住環境
第４講 地区の計画とデザイン
第５講 都市の再生と交通システム
第６講 都市と自然
第７講 都市を再生する
第８講 都市と防災
第９講 都市の景観まちづくり
第１０講 参加・協働のまちづくり
第１１講 諸外国の事例から都市計画を学ぶ
第１２講 21世紀日本の都市計画の課題
第１巻 まちづくりの方法
第２巻 町並み保全型まちづくり
第３巻 参加による公共施設のデザイン
第４巻 公共建築の設計者選定
第5巻 発注方式の多様化とまちづくり
第6巻 まちづくり学習
第7巻 安全・安心のまちづくり
第8巻 景観まちづくり
第9巻 中心市街地活性化とまちづくり会社
第10巻 地球環境時代のまちづくり
（おわり）
○本書詳細ページ
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2520-0.htm
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都市・まちづくり学入門
