『都市・まちづくり学入門』(日本都市計画学会関西支部新しい都市計画教程研究会編)(1)

 この本は都市計画学会関西支部の20周年記念事業として、久隆浩さんを始めとする新しい都市計画教程研究会が取り組み上梓されたものだ。


 その執筆の過程で、この春に「近未来の都市計画教科書制作 ミニ・ワークショップ」として執筆概要を報告頂き、公開で議論した。それも与って、「難しいテーマ」に挑戦した「多人数による執筆」の「学会の記念出版」の本であるにもかかわらず、それなりに筋の通った本になったのではないかと思う。


 ミニ・ワークショップ時のテーマは、「造る都市計画から成るまちづくりへ」だった。
 このテーマは変わらないが、それでは分かる人にしか分からないだろうし、東京の人には雰囲気も共有されていないだろうという訳で、書名は『都市・まちづくり学入門』としたうえで、「『大きくつくる』都市計画から、自然な小さな変化を自律的に積み重ねる『自(おの)ずと成(な)る』都市・まちづくりへ」と帯でうたうことにした。


 また書名について議論していくなかで、思ったのは、「造る都市計画から成るまちづくりへ」とすると、「都市計画」と「まちづくり」が別々のものと捉えられてしまうということだ。
 近代は「都市計画」しかなかった時代で、都市計画に対抗する物として「まちづくり」が生まれ大きく育ったのが近代がほころびてきたこの数十年だったように僕は思う。

 だが今は、都市計画とまちづくりを分けて語ることがナンセンスになった、本当の意味でのポスト近代の始まりだと思う。
 そして、実は「計画」とか「つくる」という言葉で語る「姿勢」が問い直される時代になのではないか。
 『都市・まちづくり学』という書名を付けながら、なんだ!と怒られそうだけど、適切な言葉がなく、そうせざるを得なかった。本当は自然な小さな変化を自律的に積み重ねる『自(おの)ずと成(な)る』ということを素直に伝えられる次の言葉が欲しいところだ。
 「結果自然成(けっかじねんになる)」という言葉を帯に大きく打ち出そうとしたが、社内の「分かりません」の大合唱のうちに潰れてしまった。


 「まちづくり」に対して「まち育て」と言う人もいた。でも他動詞では、どうしたって育てる主体と育てられる客体という関係が残る。
 加えて、今は「育つ」という溌剌とした成長期ではない。
 かといって老成とかではあまりに夢がない。
 誰か、良い言葉を見つけてくれないものだろうか。


(続く)


○本書詳細ページ
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2520-0.htm

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都市・まちづくり学入門