『いま、都市をつくる仕事』(日本都市計画学会関西支部・次世代の「都市をつくる仕事」研究会)(1)

若手の仕事観が分かる本

 本書は先日紹介した『都市・まちづくり学入門』とともに、日本都市計画学会関西支部20周年を記念して上梓された本だ。身内では『都市・まちづくり学入門』は中堅本、こちらは若手本と呼んでいた。というのは書き手が前者が一人を除いて40〜50代、こちらが20〜30代となっているからだ。


 前者が近未来の都市計画教科書とも呼ばれたように、今すぐではなくても、いずれ都市計画&まちづくり学の王道となることを目指したものであるのにたいして、こちらは、多様化した仕事のあり方を、まずはそのまま受け止めることから出発し、考えようとしている。


 というわけで、僕のような「老人」から見ると、若手がどんな仕事、生き方に憧れているのか良く分かる本になっているし、同時代を生きる「若手」が読むと、そうした魅力的な仕事、生き方を切り開くヒントがたくさん埋め込まれた本になっていると思う。

都市をつくるとは、どういうことか

 ここで気になるのは「つくる」という言葉だ。


 「結果自然成(けっかじねんになる)」というのは久隆浩さんの言葉で、次世代研の若手たちが共感するかどうか分からないが、彼らも、都市を「建築」のように計画したり、つくったりするという不自然さには気づいているだろう。
 それは生命すら、つくったり、思いどおり計画したりできると夢想した近代の名残ではないのか。

 それが、ハードに止まっているなら、まあ「つくる」でおかしくはないのだが、ライフスタイルや関係性にまで話が広がると、「それをプロがつくるのか? 誰もそんなことは頼んでいないぞ」ということになってしまう。
 だから、「都市をつくる仕事」というテーマ設定自体、『都市・まちづくり学』同様、古い革袋に新しい酒をいれようとしているという感は拭えない。


 いずれ、しっくりした言葉が生まれるのだろうか。いや、生み出したいものだ。


(続く)


○『いま、都市をつくる仕事』詳細情報
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1293-4.htm

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いま、都市をつくる仕事: 未来を拓くもうひとつの関わり方