山崎亮『コミュニティ・デザイン』(1)

今、心底、元気を与えてくれる原稿

 スタッフの井口さんが企画し、社をあげて制作している山崎亮さんの『コミュニティ・デザイン』を読んだ。


 世の中、本当に暗いというか、気が重くなるような話ばかりの今、心底、元気を与えてくれる原稿だった。


 今、未曾有の災害と電力不足が日本を襲っている。
 被災された方々の忍耐強い姿や、命を賭して原発事故に立ち向かう人達に、「日本人は捨てたもんじゃない」と思いつつも、自らつくり、その恩恵の元に暮らしてきた原発の破綻、そしてその結果としての国土の喪失、電力等の制約、エネルギーや資源をふんだんに使って来た時代が終焉することへの不安がこみ上げてくる。


 何よりも恐怖を覚えるのは、その変化への社会のリアクションだ。
 あまりにスピードが速すぎて、じっくり考える間もなく、物事が激しく動いていく。
 個にまで解体されてしまった人びとが、マスコミとの応答のなかで、ムードとか世論という津波となって人の思いを流し去っていかないか、とても不安だ。


 そんな今、『コミュニティ・デザイン』は一人一人の人間を信じようと呼びかけている。そして、人と人との繋がりを取り戻すことはできるし、そのために出来ることもあると確信させてくれる。
 だから、心底、元気を与えてくれる原稿だと言った。


 本書の巻頭には写真と共に印象的な言葉が並んでいる。


 「モノをつくるのをやめると、人が見えてきた」。
 「1人でできること、10人でできること、100人でできること、1000人でできること」。
 そして、
 「デザインは社会の課題を解決するためのツールである」。


 だから


 「状況はまだまだ好転させられる」


 に違いない。

続く