『提言! 仮設市街地』(1)


 東北・関東大地震の復旧・復興に少しでも役立てばということで、著者のご厚意を得て学芸出版社がもつ関連書籍をPDF化して、HPで無料公開することにした。
http://www.gakugei-pub.jp/higasi/index.htm


 そのなかでも復旧期にもっとも役立つのが、この本だろう。


 本書の主張は一言で言えば、仮設住宅は短期の収容施設ではない、ということだ。


 阪神大震災では仮設住宅の解消に5年を要している。正式には応急仮設住宅と言うそうだが、応急住宅で凌ぐには、あまりに長い。


 また公平の原則からコミュニティでまとまって入居といったことはできず、絆が断たれてしまった。そのためもあって孤独死が問題になり、遠隔地ゆえ復興まちづくりへの参画も難しかった。
 そのうえ、仮設住宅は住むところであって商売をするところではないとされ、小さなビジネスを再生することも出来なかった。


 だから住んでいた場所になるべく近い場所で、コミュニティがまとまって入居できるようにすること。そして、そこで生活再建のきっかけが掴めるように店舗、工場をはじめ小さなビジネスのための施設建設を認めることが必要だ。


 これらの教訓は中越地震ではそれなりに活かされ、集落単位の入居も実現し、仮設住宅を使って理髪店を再開した事例が話題になった。


 しかし、まだ法改正に至らない課題も多く、法では2週間以内に着工しなければならないことになっているし、起こるであろう「すぐ作れ」「早く作れ」の大合唱のなかで、拙速を避けることは難しい。


 NHK(3.14 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110314/t10014675591000.html国交省はすでに建設用地の調査に職員を派遣したそうだが、どこでもいいからともかく建てればよいというものではない筈だ。
 平行して避難所で、被災した人々の集落再建への意向をしっかりと聞き取るべきだろうし、仮設以外の、たとえば自力再建への補助金仮設住宅に必要な資金を回すとか、様々な工夫を是非実行して欲しい。


 本書は東京での震災を念頭に書かれているため、想定している仮設住宅必要戸数は24万戸と今回よりもはるかに大規模だが、人口密集地を対象としているため想定される復興のあり方が今回とは異なる。
 被災直後の意向把握はきわめて難しいとは思うが、被災地に住み続けたいか?と言う点からきちんと把握する必要がある。



 そのうえ、今回は立ち入り禁止になる広大な地域がでてしまうかもしれない。そうなると、そこでは話は全く違ってくる。

続く