大西隆編著『人口減少時代の都市計画〜まちづくりの制度と戦略』(3)

 昨日は大西さんの1章の、ほんの出だし部分を紹介した。
 今日は、途中を一気に飛ばして、大西さんによる最終章「これからのまちづくりと法制度」を紹介しよう。

政権奪取後の民主党

 この章では、最初に民主党の政策INDEX 2009への期待と、政権奪取後の迷走ぶりを書かれている。人口減少時代に備え、そろそろ本気にならなければと国交省ですら考えていた都市計画法制度の抜本改正は忘れ去られ、大臣の肝いりではじまった成長戦略会議は、小泉政権と同様の大都市での規制緩和・金融措置を主軸とする都市再生路線が主力政策に位置づけられた。


 その後、多少修正されたのだが、「現政権は、いったんは都市を民間企業が国際競争のためにどんどんビルを建てる場所と考えたが、それでは人々の賛成が得られそうもないので、少し修正を施したものの、果たしてどう考えればよいのかわからない、と思考停止状態にあるのではないか。都市計画法制をめぐる議論もまた、こうした混乱と思考停止を反映したかのように停滞している」(p238)という。


 僕も民主党の政策INDEX 2009には大いに期待した一人なので、ほんとにがっかりだった。2010年の参院選では、政策INDEXは民主党のエライさんから嫌われ、作られなかったという。マニフェストのような骨格だけではなく、政策と呼べるレベルの議論がなぜ無用となるのか。そういう作業もせずに政治主導などと言えるのか。小澤さんと検察のバトルよりも、本当はこういう問題こそもっと取り上げられるべきだと思うが、大きくは報道されなかった。

都市の変化

 話をもとに戻そう。
 大西さんは、続いて1968年法からの40年間、都市がどのように変化したかを見なおし、次の三点を本質的な変化として上げておられる。


 第一は逆都市化だ。
 DID人口・面積の伸びも、すでに止まっている。
 三大都市圏では人口が緩やかに伸び、人口密度がやや増加しているのに対して、地方圏では都市の拡散化、低密度化が進んでいる。


 第二は超高齢社会。
 すでに紹介したように100年後には総人口が4000万人ちかくにまで減ってしまう。江戸時代に逆戻りという感じだ。
 また東京圏等の大都市では、今後急速な高齢化に見舞われるという。


 第三は低炭素化への要請。
 日本政府は2050年には80%削減を世界に表明している。


 最後は地方分権化への要請。
 そこでは、1)直接民主主義的な議論の展開と意志決定の方法をどのように取り入れていくか、2)都市計画が最低限目指している水準と、それをさらに良くするために必要な市民の追加的な努力を丁寧に明らかにすること、3)広域調整、の三つが課題となるとされている。


 以上をまとめると、逆都市化の時代においては「大規模開発や再開発等のような大がかりな市街地改造を目論むのではなく、効果的に問題を解決していく修復型の手法が基本となることを認識することが重要と思われる。つまりすでに広域的に広がった市街地は、市街化の初期のような高密な市街地にもどることはできないのである。中心部、郊外部での都市環境の特性を活かしながら、密度の低下に合わせて不都合を改善する発想が大事なのである」(p248)とされ、最後に「人口減少社会における都市計画法制のあり方」を提言されている(表1、p249)。


 この表と、大西さん自身の骨太にまとめられた提言は、本書を見て頂きたい。


続く

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