大西隆編著『人口減少時代の都市計画〜まちづくりの制度と戦略』(1)
本書は東大まちづくり大学院シリーズの3巻目。
『低炭素』『広域計画』につづき、『都市計画』をとりあげた。
度肝を抜かれたのは2100年までの人口予測等を示した図2(p242)だった。なんと2100年には人口が4000万近くまで減っているではないか。
その上、2075年頃には65歳以上の老齢人口割合が40数パーセント、生産年齢人口割合は50パーセントを下回るあたりとなり、その差は10%を切るところまで接近する。だから生産年齢人口1.2人で一人の高齢者を支えなければならなくなるという。*1
都市計画は「国家100年の計」なんて話もあるし、実際、効果が出てくるのは数十年かかるという面がある。そうであれば、少なくとも数十年は反転が不可能な人口減少と高齢化の大波を見ぬふりはできないだろう。
まして40年前、成長のまっただ中に作られた、成長のための都市計画制度を墨守していては、どうしようもない。
日本は成長志向の都市計画から、一気に前人未踏の地に乗り出さなければならない。
これは、とても難しいことだと思う。その難問に『都市計画 根底から見なおし新たな挑戦へ』とともに、しかし、また違った視座から切り込もうというのが本書だ。
本書の構成は次の通り。
3月15日には大西、遠藤、松本さんによる出版記念講演会も東大で行われる。
東京圏の方は著者の肉声をお聞き下さい。
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1103oonisi/index.htm
人口減少時代の都市計画
〜東大まちづくり大学院シリーズ〜
●目 次
1章 都市の発展と都市計画制度/大西 隆
1-1 都市計画制度の機能と意義
1-2 都市計画制度の歴史的発展
1-3 現代の都市計画制度
1-4 都市問題の構造と都市計画制度2章 土地利用計画とまちづくり/明石達生
2-1 計画の論理と規制の論理
2-2 用途地域の変更は機械的に
2-3 地区計画の使い方
2-4 街を良くする動機を仕組む
2-5 都市計画からPlanningへ3章 都市施設とまちづくり/岸井隆幸
3-1 計画の論理と規制の論理
3-2 「都市施設を巡る都市計画制度」の今後の方向性
3-3 「土地区画整理事業を巡る都市計画制度」の今後の課題4章 市街地再開発事業とまちづくり/遠藤 薫
4-1 都市計画と市街地開発事業
4-2 都市再開発の足跡
4-3 リスクマネージメントと市街地再開発事業
4-4 人口減少社会における今後の展望5章 民間都市開発とまちづくり制度/長島俊夫
5-1 民間都市開発の進展と効果
5-2 民間都市開発を支える都市計画諸手法
5-3 エリアマネジメント
5-4 日本の成長エンジンとしての東京の役割6章 まちづくりと市民参加/小泉秀樹
6-1 はじめに
6-2 都市計画法における市民・住民等の関与・参加
6-3 市民主体のまちづくりの仕組みづくりへの挑戦
6-4 市民主体の都市計画・まちづくりから求められる
制度改正とは7章 分権最前線に見るまちづくり条例
多元的土地利用規制における法律と条例の新しい関係
/松本 昭
7-1 分権改革に見るまちづくり法制の変化
7-2 分権から捉えたまちづくり条例の系譜
7-3 土地利用法制を巡る新しい展開
7-4 建築基準法とまちづくり条例の連携・融合8章 まちづくりの諸事例
8-1 〈石川県金沢市〉条例によるまちづくり
―中心市街地活性化に挑む金沢市/大西 隆
8-2 〈東京都府中市〉大規模開発事業の土地利用調整制度
―土地取引前の二段階助言システム/松本 昭
8-3 〈東京都中央区〉銀座ルール
「地区計画+デザイン協議」によるマネジメント型まちづくり
/松本 昭
8-4 〈兵庫県芦屋市〉「景観地区」がまちづくりを変えた
不認定処分に見る
「都市建築法制」と「都市景観法制」の関係
/松本 昭
8-5 〈静岡県下田市〉市町村都市マスタープランの見直しを
契機としたプランニングキャピタルの形成
/小泉秀樹
8-6 〈東京都練馬区〉都市マスタープラン策定を契機とした
主体づくりと仕組みづくりの相互作用的展開
/小泉秀樹・杉崎和久
8-7 〈東京都北区〉神谷・豊島地区密集市街地整備/遠藤 薫9章 これからのまちづくりと法制度/大西 隆
9-1 迷走する都市政策
9-2 都市の置かれた状況と都市計画の課題
9-3 人口減少社会における都市計画法制のあり方
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大西隆編『人口減少時代の都市計画 (東大まちづくり大学院シリーズ)』
*1:ただし、高齢者が6〜9%程度であった1970年頃まで、年少人口比率は35〜25%ぐらいあった。それが2075年には10%程度になってしまうのだが、逆に言えば老齢人口と年少人口の合計は、いつもそれなりの割合を占めていた。生産年齢人口割合が60%を超えていたのは1960年頃から2000年頃までに過ぎない。昔は元気な大人が多くの子どもといくばくかの老人を支えていたのが、将来は多くの老人といくばくかの子どもを支えることになる。