蓑原敬さんのセミナーのまとめがやっとできた(1)

 9月6日の蓑原さんのセミナー「都市計画の新たな挑戦」の記録草稿がようやくまとまった。


 忙しかったとか、いろいろ言い訳はあるが、途中にあった食旅のセミナーのまとめは一日で終わったので、やっぱり難しかったということだ。(リムボンさんのセミナーのまとめも出来ていません。ごめんなさい)。


 時間はかかったし、内容も濃いし、セミナー参加者には差し上げるとしても、全部、無料で公開してしまって良いものかどうか、迷っている。
 いっそ電子ブックレットにでもしようか。
 それはともかく、少し感想を書いてみよう。

国交省がまた出張るのか?

 蓑原さんの前置きのあと、質問への回答に移った。
 質問が少なかったときのために僕が用意した質問から取り上げていただいた。おそらく素人ぽくて、その分、大きな枠組みでの質問だったからだろう。


 まず最初にお聞きしたのは、「都市田園計画が全国土をコントロールするというのは、国交省が出張りすぎでは?」ということだ。
 これについては、都市田園計画法は内閣府で所轄することになるだろうし、農業関係者が都市計画に拒否反応があるなら、別に名前に都市がはいらなくても構わない。国土をトータルに管理することが不可欠だという回答だった。


 あえて注文をつければ、そうであれば、早く都市計画や建築の枠を超えた運動にしてゆきたいものだ。
 その点『都市計画の新たな挑戦』で広井良典さんに加わって頂けたのは、大ヒットだった。

経済やコミュニティへの関わりは

 次に、肝心の経済やコミュニティにはどう関わってゆくのかが分かりにくいと聞いてみた。


 蓑原さんからは、我われが慣れ親しんで懐かしがっている街をつくってきた家業型の産業が衰退していて、街の存立基盤が脅かされていること。次の姿として個業の可能性、福祉産業の可能性がうっすらと見えているが、それがどんな街をつくるのかは、まだ分からないというお話だった。


 また宗田好史さん(京都府立大学)は持論の「個業の勃興、女性の活躍、福祉産業の可能性」を熱く語られた。
 詳しくは、たとえば『創造都市のための観光振興』をご覧いただきたい。


 僕が求めたのは、「みんなが投資しやすい、自分の暮らしをよくしていく努力が、街をよくしていくことに繋がるような都市計画」なのだが、その道を描くのは難しいという。自治体で試行錯誤を重ねてやってみせるしかない、その途上だということだった。


 最後に聞いたのは、街並み計画法とコミュニティ再生の関係だ。
 建築基準法の集団規定を切り離し都市計画と一体化するといったことが、どうしてコミュニティの再生に役立つのか?。


 これについては、納得のいく回答は得られなかった。
 ドミノマンションのような周辺資産つぶしはおかしい、そういった構造を改めて最適化に向けてやるべきというお話があったが、これはむしろ、「みんなが投資しやすい、自分の暮らしをよくしていく努力が、街をよくしていくことに繋がる都市計画」という問いへの回答かと思う。

 ただ蓑原さんのお話全体では、街に関わるなら総合的、総体的に関わらなければならず、現在の都市計画の枠内に止まっていては、ダメだということがよくわかった。
 たとえば老朽家屋の除却に補助金を出すだけではダメで、そこに住む人の生活設計にまで踏み込まなければ、現場では話ができないという。だからコミュニティの再生をめざすなら、最低基準にこだわる建築基準法の世界に囚われていてはダメなのだ。

続く