『電柱のないまちづくり』

電線のない街を目指して

 『電柱のないまちづくり』の企画を著者の方々から聞いたとき、出したいと思った。
 それには2つ理由がある。
 第一は「馬鹿みたいに高い」と思われている電線類地中化だが、今ではかなりコストダウンが出来るようになっていること。
 そして、狭い道では出来ないと思われているが、今では様々な理由により出来るようになっていること。
 この2点を伝えたいと思ったからだ。


 だから帯もそのものズバリ「狭い道でもできる! コストもここまで下がる!」というキャッチフレーズとした。
 中味は、一つは商店街や住宅地、都心再開発、歴史的な町並み等の事例紹介。特に実現プロセスに力点をおいた。
 そして、電線類地中化の最新の技術を、地中化に拘らず、軒下配線や裏配線も含めて幅広く紹介している。地元の人や行政、そして電力会社や施行者が対話・協議のために必要な共通知識としては十分なものを狙っている。

安くなっても高すぎる?

 本書によると、キロメートル当たり5〜10億円と言われたコストも1〜4億円ぐらいまで下がってきているという。
 下がったのは嬉しいが、それでも高い。土木工事のコストは知らないから素人考えでしかないが、たかが穴をほって電線等を通すだけで1mにつき40万もなぜかかるのだろうか?
 100m掘って、線を埋めるだけで4千万。80平米級のマンションの建設なら二戸か三戸分だ。
 ぼっているのではないか。


 たしかに自動車やパソコンのような大量生産品ではない。現場によって考えなければいけないことも多いだろう。だが、工芸品じゃないんだ。
 こういうものこそ、厳しい競争に持ち込む方法はないものか。

苦労している事例も載せている

 僕の家の側の烏丸通りも5年ぐらい前から取りかかり、1年ほど前にようやく電線類が地中化された。
 最初の1年は比較的早かった。沿道のホテルや文化施設、店舗が参加して協議会ができ、イベントがあり、電線地中化の要望が出され、市がそれを受けて事業を進めることになった。
 そのうち歩道が掘り返され、新しい電灯が設置された。ところが、それからが長い。いつまで経っても電柱がなくならない。電灯も古いものがそのまま使われて、新しい電灯は灯らなかった。


 噂と推測だが、沿道の住民から相当大きな反発があったようだ。「観光客なんか増えて欲しくない」「増えると五月蠅くて迷惑」「誰が要望したんだ」という感じで、抵抗したのではないかと思う。僕の家のそばのお家の前でも、「いつまでもイヤとは言っておれんかな」という相談をしているのを漏れ聞いたことがある。


 本書にも、なかなか苦労の真っ最中という例も載せている。
 成功例でも、電力会社との折衝の苦労、行政との問題、住民間の問題など、なるべく苦労を書いてもらった。もちろん、それらの問題をどうクリアしていったかも書いてある。
 電線類地中化をのぞむ各地の方々に役立てて欲しい。



 
烏丸通り・御所付近の電線類地中化では、左の写真のように歩道は狭いが、右のように路地から裏配線としている)

○本の紹介ページ
 NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク編著『電柱のないまちづくり〜電線類地中化の実現方法


○アマゾンリンク
電柱のないまちづくり―電線類地中化の実現方法