三橋重昭『よみがえる商店街〜五つの賑わい再生力』
出版の経緯と内容
この本は商店街活性化のアドバイザーとして、またNPO法人まちづくり協会や現代まちづくり塾の仕掛け人として著名な三橋さんが雑誌「専門店」に書かれた連載をベースとしたものだ。
実は、一度、僕からお願いをしてまとめ直しの承諾も得ていたのだが、どうもまとまらないままに時が過ぎ、改めてスタッフの宮本が少し違った視点からのまとめを提案して実現した。
下記の目次で、第2部では12の商店街を紹介しながら、五つの切り口で賑わい再生力を論じている。
目次
第1部 商店街はよみがえるか
第2部 元気な商店街の再生力
第1章 街を動かす人間力
第2章 まちづくり組織の地域運営力
第3章 個店を輝かせる地元密着力
第4章 地域資源を活かした観光力
第5章 街の風格を生みだす創造力
商店街再生の七つのステップ
第1部の最後のほうで、三橋さんは商店街再生の七つのステップを示している。
1)現状を把握しよう
2)自らの存在意義を問おう
3)将来ビジョンを共有しよう
4)ビジョン実現に立ちはだかる根本的問題を発見しよう
5)根本的問題を解決する戦略を提案しよう
6)戦術的計画を策定しよう
7)今すぐできることから実施しよう
本当は「2)自らの存在意義」が問題なのだろうが、そこを真面目に考えすぎると何も始められないような気もする。
売上げがどんどん減っていく中で、どんな存在意義を見いだすか。
商店街が文化を守っている?
美辞麗句は読者が離れて行っているときに、空疎に聞こえないだろうか。
まして「根本的問題を解決する戦略」が、そう簡単に見いだせるだろうか。
出版の現状に置き換えて考えてみても、僕は「7)今すぐできることから実施」していくなかで、存在意義を問い直し、根本問題とその解決を探っていくしかないような気がする。
七つのステップのように計画をたてロジカルに動くという話は美しいが、まずは試行錯誤しながら、計画も常にフィードバックしながら、後から試行錯誤を振り返ってみたらステップに整理できる物なのではないだろうか。
今度、三橋さんにあったら聞いてみたい。
街は要るか?、商店街は要るか?
中心市街地は要るか、街は要るかという議論もある。
まして商店街なんて要るのだろうか?
いくら補助金を突っ込んで、イベントを支援したりハード整備をしても、それぞれのお店に魅力がなくては話にならない。
だから、商店街が頑張る前に、個店が頑張らなければならないし、頑張れないなら頑張りたい人に店を貸して欲しいと思う。
そのうえでなお、いくら素晴らしいお店があっても、荒廃したマチナカにポツンとあるだけではつまらないと思う。だから賑わいの場所、中心市街地はやはりあって欲しいし、お店が建ち並んでいてアーケードがかかっていてといった形にはこだわらないが、お店が集まった場所は欲しい。
だから頑張って欲しい。
個々のお店の努力、中味が大事だが、それだけでは十分とは言えない。
それは建物の修理も行き届かず、空き店舗も増えたショッピングセンターが成り立つかどうか考えてみたら明らかだ。そんなところで個店が頑張っても限界がある。そうなる前に目先の利くショッピングセンターなら撤退してしまうだろう。
だから、自分の店が大変だから商店街活動なんてやってられない、ではなくて、大変な時だからこそ、個店の力と街の力が相乗効果を発揮するような、そんな方向に動いていって欲しいものだ。
○三橋さんのセミナー(11.1.20)
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1101mitu/index.htm
○三橋重昭著『よみがえる商店街―5つの賑わい再生力』
○蓑原敬、今枝 忠彦、河合 良樹著)『街は要る!―中心市街地活性化とは何か』