雪のジルベスター・コンサート


 夜、8時半、自宅を出てびわ湖ホールに向かう。
 地下鉄や京津線は順調に動いていた。
 逢坂を超えると、京津線の駅が雪に覆われている。
 嫁さんが「車が動いていないよ」という。
 確かに、そうだ。道路は車がいっぱいだが、動いている様子がない。


 予定通り、びわ湖ホールに。でも、なんだか活気がない。
 開演しても、僕の左側や、左後ろがガラッとしている。4階の一列目、真ん中あたりという、割とお得な席なのに、空いている。
 司会の桂米團治さんが言うには、JRで大津まで来ている人が、バスがこなくて困っている、遅れているという。どうしても来れないという人も多いらしい。


 メインはリストのピアノ協奏曲第1番(ピアノ、金子三勇士)。なかなか凛とした音だ。
 そのほか歌劇「シチリアの夕べの祈り」序曲、歌劇「ナブッコ」より“わが想いよ黄金の翼に乗りてゆけ”、「アイーダ」より凱旋行進曲など。


 “わが想いよ黄金の翼に乗りてゆけ”はバビロンに閉じこめられたユダヤ人が、故郷のエルサレムを思って歌う歌だが、イタリアの第二の国歌と言われ、また右派政党北部同盟の党歌のように扱われているという。


 虜囚の祖国への思いをオーストリアに支配されたイタリアの運命に重ね合わせたというが、歌詞は明らかにユダヤ人の歌なのだから、不思議だ。
 ひょっとして歌詞は変えられているのだろうか?


 終演後、送迎バス乗り場にいくと、いつもの倍ぐらいの人だかりだった。あげく、あと数人というところで最後のバスのドアが閉まってしまった。次は大津駅からバスが戻ってくるのを待つことになるという。


 仕方がないので膳所駅まで歩くことにした。
 嫁さんは仏頂面だったが、あんな吹きさらしのところで30分も待っていられるものか。そのうえバスの中で間に合うかどうかとイライラしているのも辛い。


 膳所駅につくと楽器を抱えた団員の人も結構多い。
 大津駅からは、チェロを抱えて暗闇の中に消えていった男の人も乗ってきた。
 膳所のほうが近いのに・・・ご苦労様。
 嫁さんの機嫌も直っていた。目出度い。