第4回季刊まちづくり26号読書会(1)〜都市計画区域


 連続4回の季刊まちづくり26号の特集「地域づくりの視点から都市計画制度に提案する」をめぐるワークショップが終わった。
 よくまあ、4回もやってくださったものだと感心する。


 大げさに言えば、東京での討論会や今回のワークショップは、本や雑誌づくりの一つのあり方を示していると思う。
 極論をすれば、本だけでは、書店においておくだけでは、情報発信の渦は作れないということだ。一方、新聞やテレビ、雑誌の広告は、コストばかりかかって、その影響力は低減している。とても1000部、2000部の出版では使えない。
 だから、こういった個々は小さくても顔の見える関係での情報発信を積み重ね、それを様々なメディアでフォローしていくこと、そのなかに本というメディアを浮かべる。そんなことが、これからますます必要になってくるのではないか。


 その先鞭をつけてくださった米野さん始め発表者の方々、参加してくださった方々に感謝したい。


 ところで今回は、広域や土地利用といった、やや、難しい話題だった。その内容は下記の三つだ。


  提案01.都市計画区域を見直す:姥浦道生+瀬田文彦
  提案08.環境・生態系の視点を都市計画制度に位置づける:田中貴宏+山崎義人
  提案13.都市内に散在する農地を環境整備に活かせ:柴田祐

提案01.都市計画区域を見直す

瀬田さんの提案

 瀬田さんの問題意識は、第一に、これから市町村への都市計画の分権が進んでいくのに、市町村と都市計画の単位である都市計画区域の領域が一致せず、複雑な関係にあることが問題ではないかということだ。


 第二には、仮に一自治体一都市計画区域となるように整理しても、都市計画区域外では都市的な開発も自由という訳の分からない現状は続く。


 そのうえ、都市マスに区域マス、国土利用の構想、土地利用基本計画など様々な計画はあるが、それぞれ曖昧であったり、個別法の規制を追認しているに過ぎず、実効性が乏しい(p24)。


 そこで、基礎自治体レベル、広域レベルにおいて、次のような改革が必要ではないか。
 ただし、ここでは都市計画法国土利用計画法の改正に限定して考える。だから、これらの改革が、現状の農振法や森林法などと併存できるかどうかが、問題になる。

基礎自治体レベルの大枠

 モータリゼーション等により、都市的・非都市的土地利用を一体的に計画する必要性が高まっている。現在も区域設定に自由度が高い都市マスでは、自治体の行政域全体を対象としている市町村も少なくない。
 また実態としての地域空間は、農地、水面なども含め、様々な土地利用から構成されている。
 よって市町村全体を、農地、森林等も含め、計画対象とするべきである。


 そして市町村の都市計画は、将来ビジョンを描く「空間利用構想図」と、より具体的に即地的に位置や範囲を示す「空間利用計画図」の二本だてにする。


 この際、農振計画や地域森林計画等との関係は、空間利用計画は保全すべき農地や森林を示すものであり、これらの計画はより積極的に整備をすすめる区域の計画を示すものであり、併存は可能である。

基礎自治体レベルの規制の実際

 市街地や集落はコンパクトに形成し、その外部では開発を抑制し農地や森林を保全する。このような方向は概ね共有されているとしても、その実際のあり方は様ざまである。
 そこで共通性と独自性をもった都市像を実現するために


 1)既成市街地は既成市街地区域に指定し、用途地域指定等によりコントロールする。ただし一定の規模以上の集団農地は除く。
 2)集落地域については穴埋め的な内発的開発を許容する。この集落の空間的な範囲は、たとえば50m20戸連担といった一定以上の密度で既に連担した地区とする。
 3)その他の地域は保全区域として原則として開発は認めない。

広域レベル

 広域の国土利用計画の機能を強化し、市町村空間利用計画の上位計画とする。
 「すなわち広域政府である都道府県が、広域的な土地利用の方針に加えて、市町村ごとの開発可能容量を人口・世帯や開発動向のトレンドなどを踏まえて合理的に規定し、それらが各市町村の空間利用計画やそれに基づく地区計画等の即地的な計画・規制を拘束する」(p27)という関係になる。

提案をめぐる議論

 活発な質疑があったが、提案も含め、専門的で難しい話なので、なかなかついていけなかった。


 68年法に代表される都市計画の目的は、市街化すべきところを市街化区域に指定し、その周辺を市街化調整区域とすることで、都市的な開発とそのためのインフラの整備を集約することにあったと聞く。


 ところが、市街化区域が過大に設定されたうえに、開発はモータリゼーションにより市街化調整区域を飛び越えて、都市計画区域外等にまで広がっている。そういう意味では都市計画は破綻したと言うべきだろう。


 今、再び、市街地や集落をコンパクトに形成するために、何が必要だろうか。
 確かに、全域に規制対象を広げること、複雑で分かりにくい体系を整理することは、必要だろう。


 だが、これから空き地がどんどん増えていったときに、領域を広げた都市計画で対応できるのかという次の問題が立ち上がってくる。


 市街地再開発事業のように都市計画自らがお金を投じ、事業をするということは、ごく限られたところでしか考えられない。あくまで、「開発をしたい」といった動きがあったときに、「ダメです」とか、「やるなら、こうしてください」という力しかない。


 だとすると、集落が消滅していくような時に何が出来るのか。農業が衰退していくときに、保全地域に指定してどれほどの意味があるのか。


 現在、ずぶずぶの森林法や農振法がしっかりすれば、それで良いのではという意見や、瀬田さん自身、国土利用計画を担っている企画部局からは、「都市計画区域を広げるのはへんじゃないか」という反応もあると言われていた。


 加えて、都市計画は今まで、住宅や2次産業のことしか考えてこなった。3次産業は考えてもあまりうまくいかなかった、一次産業のことを考えられるのか、という指摘もあった。


 やはり、農業をどうする、限界集落はどうするんだという大きな政策目標があって、その具体策があって、そのために土地利用をどうするのか、規制がいるのか、いらないのか、という大きな物語が必要ではないかと思う。
 そうでないと瀬田さん自身も言われるように、土地利用だけを取り出して何かをしようとしても、国民的な合意をつくり上げることは難しいのではないか。


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