第3回季刊まちづくり26号読書会(2)
嘉名さんの報告のあと、意見交換が行われた。
誰がルールを決めるのか
論点は3つあった。
一つは、そもそも合意がないところに、どのようなルールを、誰が作りうるのか、という点だ。
そもそも補完性の原理から言えば、地元でルールをつくれるようにすべきだろう。
しかし性急に規制をかけて解決するわけではない。
遠回りには見えるが、地元の関係者が、ギリギリの合意点を探っているということも、とても大事だと思う。
宗右衛門町は、決して風俗を追い出そうとしているわけではない。先に紹介した横山さんの報告を読むと、まちが風俗店との共存を実現すべく苦労してこられたことが分かる。風俗店にも商店会への参加を常に呼びかけているし、実際、無料案内所の人やホストの人なども会議に参加する人も出てきたという。また置き看板撤去の際も、「まずは40センチまでのはみ出しまでにしてください」とお願いしたという。
警察が取り締まったら、こういう少しの違法でも、容認は出来ないだろう。
ローカルルールとして公認することも、違法である以上、難しい面があるかもしれない。
また、125番街でも、地権者は高いビルを建てたがるが、それじゃ俺たちの居場所がなくなるという人たちもBIDに参加しており、クラブ、ライブハウスの価値を説いて、それを後押しする都市計画もあって、なんとか調和を保っていると嘉名さんが言われていた。
ここでルールを誰が決めるのかという最初の議論にもどると、将来的には地元の選挙等を通して代表制が担保された主体が決められるのが本来で、市や区は、上位計画との整合性や公正・公平性の観点からチェックするのが望ましい。
だが、現行法では、それはできないとしたら、季刊まちづくり26号の特集で饗庭さんが提案しているように地元の意志を確認できるツールをビルトインして、それを元に市が判断するというのでも良い。
それも現行法ではできないというなら、法では2/3の同意で提案出来るとなっているのだから、それが望ましい計画であれば、あとの1/3の説得は行政が責任を負うべきではないだろうか。
安易に行政が出ていって規制をかければ良いとは言えないが、それにしても、ほぼ100%を住民に求めるのはひどいと思う。
小泉秀樹さんによれば、現在の制度は結局のところ提案は一つにせよということであり、行政が調整にわって入ることは想定していないという。それで良いのだろうか。
市が都市計画の権限を持っているというなら、提起された問題に答えないのは責任放棄ではないのか。逆に100%同意があれば、自動的に認めるとしたら、それも責任放棄だ。
嘉名さんも、地元の対立により意見のまとまりがつかないときは、まちづくりの方向性を行政か、別の中立的な主体が検討する仕組みが必要と、季刊まち26号では書かれている(p34)。
行政の主導で都市計画を決めるときは、結構、強引にやっていて、全員同意なんてとっていない。前にも書いたが、規制の緩和も強化も個人の財産にプラスマイナスの影響があるのに、政府は果敢に規制緩和を進めてきた。その結果、損をした人だっていっぱいいる。だが、補償も合意もなにもなしだ。
このあたり、アンバランスだと思う。
どんなルールを決めるのか
ここで、仮に都市計画は財産権におよぶ強制的なもの、ローカルルールはお願い的なものと考えてみることにすると、次の論点はどんなルールを都市計画で決めるのか、だ。
なかには「商業は変化が激しいので、フットワークの悪い都市計画にはなじまない。マネージメントの主体をおいて、都市計画と連動させる。その際、大枠はともかく細かいところはコロコロ変わっても良いのでは」という意見もあった。
またそれ以前に、「地権者だけでは、少しでも高いビルを建てたい、少しでもテナント料を多く欲しいという意向ばかり表に出てしまう。商業界や産業界が動いて、20年、30年をかけて街をどう再生していくのかを示し、説得していくことが必要」との指摘もあった。
これはもっともな話だけれども、仮にそういう方向性が出てきたとしても、今のような都市計画で地元の役にたつことが出来るのだろうか。
ここはやはり5番街のアートボーナス制度のような都市計画ならではの手助けができるようにしてほしい。
だいたい、総合設計制度とか、なんだかんだとボーナスを出すことが当たり前になっているのだから、地元の賛成多数で決まった将来像に貢献する建物ならボーナスを出すことぐらい、できないのだろうか。
公開空地を設けたら、どこであっても、なんであってもボーナスを出すというほうが、公平なのか。財産権に踏み込む以上、一律ってのは、かえって不公平、非効率に思える。
地元組織の持続可能性
宗右衛門町の取り組みには頭がさがるが、それをバックアップした横山あおいさんの献身には本当に感心する。それなのに経済的には本当に恵まれないと聞いた。
紹介された125番街では警察のOBとエンパワメントを専門とする女性が専任スタッフとして頑張っていたという。DUMBO BIDでもやはり2人頑張っていたそうだ。
アメリカでは、まちづくりNPOがそれなりの給料でスタッフを雇うし、またそれがキャリアになるという話も出ていた。
これら2つのBIDは不動産への上乗せ課税はしていないそうで、会費や助成金でなんとかやっているという。
コンクリートから人へというなら、こういうところにこそお金を投じて欲しい。
また地元も、ここは覚悟してそれなりのお金を負担しないと、いつまでもプロがただ働きでは持続しないのではないか。