青木辰司著『転換するグリーンツーリズム』〜その1・協発型歓交
協発型歓交
5月に出した新刊だ。スタッフの中木君が企画・編集した本だが、僕も少しだけ手伝った。
帯には「外発型から協発型へ」とある。
これは、中央政府や外部資本による開発ではなく、かといって内発型オンリーでもなく、外部の力もうまく活かしながら持続可能な地域をつくっていこうという考え方だ。
僕が関わった本で最初に強調されていたのは後藤春彦さんの『景観まちづくり論』だったと思う。
敷田麻美さんほかによる『地域からのエコツーリズム―観光・交流による持続可能な地域づくり』でも、発展史が整理され、第三の道が強調されている。
青木さんの協発型の特徴は、相互主義の発想を強調している点だ。「地域住民の自立的実践を基点とし、彼らの思いや願いを「他人事」とせずに「自分事」にする相互交流機会(p173)」と書かれている。
これは観光とせず歓交とされていることにもつながっている。
また青木さんの議論で興味深いのは、グリーンツーリズムの成功例と言われているところでも、行政のリーダーシップがあった点を指摘していることだ。
それは悪いと書かれているのではない。しかし、これからも続けられるか、どこでも出来るかというと、難しい。国、都道府県、市町村はそれぞれの立場から、法制度の見直しや整備、助言、支援といった後方に一歩下がり、グリーンツーリズムのセカンドステージの時代を切り開くべきだと、実例を交えながら紹介している。
実は体験したことがない
「他人事にせずに自分事に」は、確かに大事な視点なのだが、僕にそれができるかというと怪しい。遠くの人のことを自分事と感じるのは難しいし、下手にマスコミの映像に共感するのも、疑問符が付く。だからこそ、行ってみることは意味のあることなのだろう。
なのに、僕はグリーンツーリズムを一度も体験したことがない。
一つには情報不足。グーグルで「京都 グリーンツーリズム」と入れると「エコツーリズム京都 グリーン活動 川」というページや、「京都市 京都館」という東京駅八重洲口にあるアンテナショップが出てきたりと、散々だ。
加えて、貧乏根性の夫婦なので、旅にいくとなると、たとえせこくても王様気分が味わいたい。「なんで農作業をやらなきゃならないの?」となってしまう。
一度は行ってみたいのだが、どうも機会がつくれない。
学生村なら行ったことがある
高校3年生のとき、信州学生村にいったことがある。
クーラーなど贅沢品だった時代、都会じゃ暑くて受験勉強もままならないというので、1ヶ月ほど信州の農家民宿に避暑兼勉強にいった。そういう学生を迎え入れてくれるところを学生村と言っていた。
たしか荷物はチッキで送った記憶がある。鉄道による手荷物輸送である。宅急便などもちろんない時代。JRまで荷物を持っていって、向こうの駅まで送ってもらったと思う。
で、一ヶ月間みっちりと勉強したかというと、一応はした。『チャタレイ夫人の恋人』の原書を読破したり、発生学やマルクス経済学の難しげな本を読んだ記憶がある。昼間は川にいって、人がいないのをよいことに裸になって水浴びをしていたら、子どもたちに見つかったしまった。
村祭りも見物した。
残念ながら、大学入試には惨敗したが、一緒に行っていたI君は、東大に受かっていたから、学生村が悪かったわけではないだろう。
浪人したときは、さすがに親は金を出してくれなかった。
農体験が好きな人は良いが、休暇はのんびり田舎で過ごしたいとか、テレビやインターネットから解放されて、普段読めない本をじっくり読んだって良いじゃないか。時間があれば安いところに行きたいな、と思う。
セミナーを開きます
7月12日には青木先生にきていただいて、セミナーを会社(京都)で開きます。
関西の方は是非、おいでください。
・7月12日第1回学芸セミナー
○アマゾンリンク
- 青木辰司著『転換するグリーン・ツーリズム―広域連携と自立をめざして』
- 後藤春彦著『景観まちづくり論』
- 敷田麻実、森重昌之編著、高木晴光、宮本英樹著『地域からのエコツーリズム―観光・交流による持続可能な地域づくり』