都市計画の挑戦2


 2000年に出した『都市計画の挑戦』の続編を企画している。
 編著者が蓑原敬氏。執筆者は中井検裕、大方潤一郎、西村幸夫氏ら前回の著者に加え、『コミュニティを問い直す』の広井良典氏、『バスとまちづくり』の中村文彦氏が加わる予定だ。
 前著から10年が立ち、人口減少、少子高齢化など、当時、都市計画を揺さぶりはじめた問題が、ますます大きくなっている。とりわけ、成長期のための都市計画の制度、思想を、この時代に相応しいものにどう変えるのかは、喫緊の課題だろう。
 昨年まで国交省主導で進められていた都市計画法の改正準備作業は、政権交代後、止まっているらしい。民主党は、今はそれどころじゃないし、またマニフェストの裏付けとして公表された「政策INDEX2009」では抜本改正がうたわれていたものの、誰がどのぐらいの決意で書いたのかすら分からない。
 しかし、世の中は変わってしまっているのだから、関連諸法もまとめて抜本的に変えなければ何ともならない。従来の国交省中心の意思決定が良くも悪くも崩れてきているのなら、ここで根本的なところから議論を巻き起こしていこうというのが本書の狙いである。
 昨年末の蓑原敬著『地域主権で始まる本当の都市計画まちづくり』『季刊まちづくり26号』「特集 地域づくりの視点から都市計画制度に提案する」、そして『季刊まちづくり27号』「特集 都市計画よ、地域主権の進路を示せ」に続く、第4弾である。


 その原稿がだいぶ出てきたので、読ませてもらった。
 「どうしよう」という原稿がないわけではないが、全体としてなかなか面白い。特に広井氏に加わって頂いたことは良かった。視野がぐっと広がっている。
 草稿で読んだことをそのまま書くわけにはいかないのが残念だが、とりあえず『コミュニティを問い直す』で書かれていることを紹介したい。
 コミュニティの再生というと、地域の人間関係があまりに希薄になってしまったし、少しは顔を見える関係を取り戻すのも悪くないということかと僕は思っていたが、違うらしい。昔、社会学ゲマインシャフトからアソシエーションへと習った。農村はムラ社会、都会は人を自由にする場と習ったのだが、日本は都会に会社や核家族というムラ社会をつくり、あげく、会社も家族も頼れなくなってムラ社会の単位が個人にまで縮小しているのだという。

 だから、「空気を読め」という相互理解を拒絶する言葉が流行り、無言の同調圧力をかけ、同調しないものを排除する。ウチのソトは敵ばかりなのに、肝心のウチが個人1人1人になってしまって、無条件にかくまって貰える仲間もいない。
 だから個人と個人がつながるような都市型のコミュニティをいかにつくれるか、その際、集団を超えて会話できる普遍的な価値原理のあり方が課題だとされる。
 ここから都市計画に対して、どう発言されているか。それは発売を待っていただくしかないのだが、僕が是非知りたいのは、まちづくり協議会やまちづくり事業を担うNPO等と、その活動のなかでの様々な議論が、都市型のコミュニティの形成につながっていくものなのかどうか、ということだ。
 また広井氏が指摘する街なかの公的住宅の重要性に対して、都市計画が応えられるのか、あるいは拒絶し、別の解決案を提示するのかだ。
 これらについて、別の章で正面から取り上げてもらえたらと思っている。どこまで実現できるか、発売を楽しみにしていただきたい。


(以上、トリスタンとイゾルデを聞きながら)
○蓑原さんに『都市計画の新たな挑戦』について聞く(インタビュー)
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/002minohara/02mino2.htm


○蓑原さんのセミナー『都市計画の新たな挑戦』ご案内(20100906)
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1009mino/index.htm


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