僕の本の紹介

長坂泰之『中心市街地・活性化のツボ』(6)

従来型観光と体験型観光 次の事例は都市観光だ。「体験観光ネットワーク松浦党」の事例を紹介されたあと、まとめられている表が面白い。 従来型観光 体験型観光 簡単、楽(らく) 大変 やさしい むずかしい お手軽、すぐできる 時間がかかる 安全、雨天中止 …

長坂泰之『中心市街地・活性化のツボ』(5)

昨日、予告したように草稿に紹介されている事例から幾つか紹介しよう。 誰も助けてくれないから自分たちでする これは中心市街地ではなく京都府の丹後半島の付け根にある京丹後市(旧大宮町)にある常吉村営百貨店という事例だ。 「地域の住民が諦めずにそし…

長坂泰之『中心市街地・活性化のツボ』(4)

何から手を付けるのか 郊外の問題もさることながら、中心市街地、とりわけ商店街が、行きたくてたまらない場所かというと、正直、そんな街がどれだけ残っているだろうか。不便だから中心市街地に行かないのではない、魅力がないから行かないのだ。 長坂さん…

長坂泰之『中心市街地・活性化のツボ』(3)

賑わいの復活か、持続可能性の獲得か 中活三法で商店街を切り捨てた政府も、さすがにこれではまずいと思ったのか、新中活三法では郊外の大型店規制に踏み込んだ。 ただ、規制をするかしないかは自治体に任された部分が多い。そのため、積極的な規制策を導入…

長坂泰之『中心市街地・活性化のツボ』(2)

まちなかが失ったもの・こと 長坂さんは大店法廃止後の10年間で僕たちが何を得、何を失ったのか、「まちなかと郊外で増えたこと・ものと減ったもの・こと」から考えようと、これらを数え上げておられる。 まちなかで増えたもの・ことは、シャッター街、ど…

長坂泰之『中心市街地・活性化のツボ』(1)

長坂泰之さんが『中心市街地・活性化のツボ』の原稿を書いてくださった。長坂さんは『失敗に学ぶ中心市街地活性化―英国のコンパクトなまちづくりと日本の先進事例』を横森豊雄さん、久場清弘さんとともに書いて下さった方で、この本の編集・レイアウトを担当…

『季刊まちづくり30号』(3)

昨日に引き続いて、各地の事例を紹介しよう。 他とはだいぶ様子が違う西宮の事例にも考えさせられる点があります。 練馬区福祉のまちづくり推進条例〜下郡山啄さん 福祉のまちづくり条例は「季刊まちづくり」に初登場ではないかと思う。 そういえば環境関係…

『季刊まちづくり30号』(2)

昨日に引き続き季刊まちづくり30号の特集の紹介を続けよう。 狛江市のまちづくり条例〜黒崎晋司さん 僕にとっての注目は狛江市の「まちづくり条例における開発調整システム」(黒崎晋司さん)だ。 これは事前協議の申請から協定の締結までの間に、別途、地元…

『季刊まちづくり30号』(1)

3月1日発売の『季刊まちづくり30号』の特集は「地域主権時代のまちづくり条例」だ。 目次は下記の通り。 ●特集 目次 ○論考 市民の政府とまちづくり条例〜五十嵐敬喜 まちづくり条例の展開〜野口和雄 Q&A 地域主権時代の条例のあり方を問う〜Q編集部、A…

佐々木一成『地域ブランドと魅力あるまちづくり』いよいよ出版(2)

統合ブランドとしての京都 佐々木さんは本書の最後で統合ブランドを京都を例に論じている。 ここでは、その議論を紹介しよう。 京都という地域性 言うまでもなく京都は歴史と文化に恵まれ、山紫水明も随一だ。 伝統産業も根付いているが、同時に、それらを広…

佐々木一成『地域ブランドと魅力あるまちづくり』いよいよ出版(1)

本の狙い 地域ブランド本は数ある中で、まちづくりとの相乗効果に着目して書かれた初めての本だ。 その概要は草稿が上がった8月末に「特報・『地域ブランドと魅力あるまちづくり』」で紹介した。 そのポイントを繰り返せば、その地域がもつ地域資源(自然、…

蓑原敬編著『都市計画 根底から見なおし新たな挑戦へ』〜大方潤一郎「まちづくり条例による国際標準の計画制度」(3)

昨年、『撤退の農村計画』という本を出して、随分話題になったが、五十嵐敬喜さんが『季刊まちづくり30号』で書いているところによると、限界集落どころか、「日本の集落や地方都市の多くは、今後廃墟になっていく」のだそうだ。「そこに住む人たちが望む限…

蓑原敬編著『都市計画 根底から見なおし新たな挑戦へ』〜大方潤一郎「まちづくり条例による国際標準の計画制度」(2)

日本の都市計画制度の課題と備えるべき要件 マクロの観点から〜集約型都市構造の形成 大方さんは現状を日本型スプロール現象と呼び、指弾している。 日本の都市計画制度は、ニュータウンなどの大規模なプロジェクトをのぞけば、開発側に計画的に街をつくるメ…

蓑原敬編著『都市計画 根底から見なおし新たな挑戦へ』〜大方潤一郎「まちづくり条例による国際標準の計画制度」(1)

さて、今日は大方さんの「まちづくり条例による国際標準の計画制度」を簡単に紹介しよう。 持続可能な都市空間 大方さんは前著『都市計画の挑戦』では「1章 都市計画、土地利用・建築規制はなぜ必要なのか」で、都市計画の必要性を次のように論じておられた…

蓑原敬編著『都市計画 根底から見なおし新たな挑戦へ』〜連続セミナー第1弾

『都市計画根底から見なおし新たな挑戦へ』は近代都市計画を脱構築し、閉塞を打破しようという本だ。 だが、残念ながら改革は天から降ってきそうにはない。 政権交代前に都市計画法の改正を準備していた国交省の石井喜三郎氏へのインタビューをした八甫谷氏…

まちづくり市民事業(7)

まちづくり市民事業の連鎖とは まちづくり市民事業とは何かについてだが、佐藤滋さんは、入口は非常に広くとらえておられる。 いままで建築や都市計画で語られるまちづくりは、言っても行政による都市計画があって、それに対する補完だったり、反対だった。…

まちづくり市民事業(6)

6 まちづくり市民事業が拓く世界 6-1 都市・地域のガバナンスとしての連帯モデル 5-5で示唆されたのは、「自律した地域のまちづくりパートナーシップ組織が連携し、自治体政府とともに役割分担をして地域を運営する」共治の姿である。 このとき、公共事業予…

まちづくり市民事業(5)

5 まちづくり市民事業の地域展開モデル では実際にどのようにまちづくり市民事業は展開されているのか。 5-1 共有されたビジョンの元で、まちづくり市民事業が連携する 鶴岡市の中心市街地では都市計画マスタープランづくりのなかで地方の城下町都市として…

まちづくり市民事業(4)

3 まちづくり市民事業の5つの原則 佐藤さんは「まちづくり市民事業を排他的に定義する必要はない」としつつも、議論を拡散させないために、できれば備えているべきこととして、下記の五つの原則を掲げている。 3-1 地域協働の運営体制 「地域とともに支え…

まちづくり市民事業(3)

2-4 まちづくり市民事業のミッションと5つの類型 まず、まちづくり市民事業の主なミッションとして ・地域に安心して住み続けるための共同の住まいづくり ・町並み形成や歴史的建築の保全・活用 ・市民活動やまちなかの拠点形成 ・共用空間(コモンズ)の創造…

まちづくり市民事業(2)

2 まちづくり市民事業が生まれる 2-1 まちづくり市民事業とは 佐藤さんは、まちづくり市民事業とは何かに入る前に、市民事業について、「広義の社会的企業が担う事業と同様の流れの中にある」とされたうえで「地域社会に立脚した市民により、地域の資源と需…

まちづくり市民事業(1)

今、早稲田大学の佐藤滋さんを中心に『まちづくり市民事業』という本を書いて頂いている。昨年の12月後半は、この本の原稿の詰めで、日々、メールが飛び交った。 佐藤滋さんには「いつも、こんなに色々と注文をつけるの?」と聞かれてしまった。 正直なと…

三橋重昭『よみがえる商店街〜五つの賑わい再生力』

出版の経緯と内容 この本は商店街活性化のアドバイザーとして、またNPO法人まちづくり協会や現代まちづくり塾の仕掛け人として著名な三橋さんが雑誌「専門店」に書かれた連載をベースとしたものだ。 実は、一度、僕からお願いをしてまとめ直しの承諾も得…

関満博さん『「農」と「食」のフロンティア〜中山間地域から元気を学ぶ』出版(3)

集落営農で女性たちが自立していく さらに、僕にとっては意外だったのだが、集落営農は女性たちに大きな影響を与えたという点だ。 一般に農家の女性は、家事、育児、農業、そして年老いた両親のすべてをになっていて、とても忙しい。だが、法人化することに…

関満博さん『「農」と「食」のフロンティア〜中山間地域から元気を学ぶ』出版(2)

集落営農 今日は、いままで余り紹介しなかった集落営農について書いてみよう。 集落営農とは「農業をはじめ地域が直面している諸問題を解決し、人びとが張り合いをもって働き、いきいきと暮らし続けることができるようにするため、地域や集落で相談し、話し…

関満博さん『「農」と「食」のフロンティア〜中山間地域から元気を学ぶ』出版(1)

**いよいよ出版 10月15日に紹介した関満博さんの『「農」と「食」のフロンティア』を、今年1月1日に発売した。 関さんは産業論、中小企業論、地域経済論を専門とする経営学者で、徹底して現場を足で歩くタイプの方だ。その仕事スタイルは『現場主義の知的…

古池嘉和『地域の産業・文化と観光まちづくり』出版(2)

**池上惇さんへのインタビュー〜商品化とは〜 古池嘉和さんは池上惇さんに、そうは言っても観光が商品として市場で取り引きされている以上、価格による価値付けが進むのではないかとと尋ねている。 池上さんは「契約当事者の主体を問う必要がある」「安価で…

古池嘉和『地域の産業・文化と観光まちづくり』出版(1)

いよいよ出版 10月15日に紹介した古池嘉和さんの観光振興論、書名をどうしようか悩んでいると書いたが、『地域の産業・文化と観光まちづくり〜創造性を育むツーリズム』として1月1日に発売した。 10月15日には、「この本の狙いは決まっている」「地域経済…

スケルトン定借にようやく新方式が

スケルトン定借普及センターからニュースレターが届いた。 このスケルトン定借は、別名つくば方式とも言い、定期借地権に譲渡特約をつけ、くわえて建物はスケルトンインフィル住宅とするというややこしい方式なのだが、実は僕の家はこの方式だ。 実は『スケ…

コミュニティ・ビジネスとソーシャル・ビジネス(3)

コミュニティ・ビジネスは常にソーシャル・ビジネスか? コミュニティ・ビジネスが、常にソーシャル・ビジネスと重なるかというと、これも疑問がある。 たとえば農家のおばさんたちが自律的に取り組んでいる直売所は、地域密着の小さな商売だし、地域の雇用…